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或る夜の出来事のhkのネタバレレビュー・内容・結末

或る夜の出来事(1934年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

FILMARKSを始めて古い映画を少しずつ観てきて、100年前の映画とは信じられない質の高い名作が数多くあった。

だけれども、どこか少し耐えながら寛容な気持ちで鑑賞していたものもそれなりにあったかもしれない。

この作品は違った。映像こそ白黒でシャープさに欠けはしたものの、ロードムービー的要素、階層の違う男女が心を通わせていく会話など、惹き込まれ、クスっと笑える場面も多数。どんどん先が観たくなる展開。

信念を持った実直でやり手の新聞記者ピーター・ウォーンを演じるクラーク・ゲイブル。
わがままでおてんばの大銀行家令嬢エリー・アンドリュースを演じるクローデット・コルベール。

ふたりのストレートなぶつかり合いが、道中の様々な出来事を通じて、やがて互いに想い合う関係に変化していくのは、ロードムービーの醍醐味。それを主役ふたりが余すところなく魅せた。

聖書に出てくる『ジェリコの壁』を使ったラストシーンも見事。

令嬢エリーの父である大銀行家アンドリュースが、娘の本心に気づき、娘の愛する男と実際に会い、どんな男かを確かめたうえで、娘の本当の幸せを実現させるためにお膳立てをする。これぞ娘を持つ父親の真の愛情。

ダスティン・ホフマンの『卒業』を自ずと脳裏に思い浮かべてしまうが、新婦が自らの足で別の道へ一歩踏み出すところが決定的に違う。

男女のストレートなぶつかり合いが恋心に変化していく『男女七人夏物語』の明石家さんまと大竹しのぶにも通じる(笑)。

互いに想い合う気持ちが爆発する抱擁などの場面は最後まで描かないところもまたよし。

ロードムービー、男女のストレートなぶつかり合い→恋心の芽生え、略奪愛という映画の面白さを、嫌味なところなく爽やかに描いた元祖名作だと思います。
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