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或る夜の出来事のKKのネタバレレビュー・内容・結末

或る夜の出来事(1934年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

大学の講義。フランク・キャプラ監督の別作品『素晴らしき哉、人生』が個人的最高傑作であるボクは、いとも簡単にこの作品の虜になり、この作品が講義で観れる幸せで1限の退屈さなんて吹き飛んでしまった。この世にたった3本しかないアカデミー賞5部門受賞作品のひとつであるロマンス・コメディの原点は、その軽快な男女の掛け合いと明るい雰囲気で今でもさまざまな作品に影響を与えてるみたい。

この作品が天下統一できた理由はいろいろ考えられるけど、やっぱり当時の映画業界において最大の"壁"だったヘイズ・コードを上手く使って最終的にはヘイズ・コードをぶち壊しちゃうエンドが魅力的だったんだと思う。壁で言うとこの作品の最大のアイテム"ジェリコの壁"は非常に印象的。『新世紀エヴァンゲリオン』でもセリフに引用されてるし、壁要素だけがのこって今でも愛の表現として当たり前のように使われてる。(愛唄のMVとかね)

元ネタはヘブライ聖書に登場する城壁で、角笛が鳴ったら壊れたって逸話があるみたい。出典元は幼稚園児が5秒で考えつきそうなバカエピソードだけど、この作品では本当に輝いてみえた。面白いと思ったのが、"ジェリコの壁"は表向きには貞操を守るためのピーターのちょっとしたアイデアだけど、それは視覚的にもすごい効果的で、上手下手の関係って言うのかな?劇において主役が右側にいなきゃいけないルールを遵守するという大きな役割を果たしてた。最初のモーテルではエリーが左、ピーターが右で寝る。これはまだエリーが恋愛感情をもたないって暗示なんじゃないかな?ピーターが上手側に映らないようにって事情でジェリコの壁を使ってたのかなーなんて思ったり。次のモーテルでは位置が逆転する。上手には今度はピーターにゾッコンなエリーがいる。そしてジェリコの壁が崩れる最後の夜(2人にとっては初夜)では2人は映らず、大家さんが我らの気持ちを代弁してくれる。ヘイズ・コードをむしろ武器にして提供する芸達者なフランク・キャプラはいい監督だよなー。

ラストシーンでのバージンロード救出劇は既視感あると思ったら山P主演の『プロポーズ大作戦』だ。子供の頃から大好きだったドラマにキャプラ作品のアイデアが採用されてたって分かったのがこの作品を観て最大の感動。

どこぞの太郎が"芸術は爆発だ!"って豪語してたけどほんとその通りで、今でも通用すると思う。この作品はヘイズ・コードというモヤモヤをぶち壊したわけだけど、最近で言うと『天気の子』だって"オトナ倫理観"をぶち壊したエンディングで賞賛されるわけだ。結局映画の魅力って現実ではなかなか太刀打ちできないモヤモヤを破壊できるっていうカタルシスだと思うし、この時代でそんなこと出来るんならそりゃアカデミー賞総なめするよなーなんて。

個人的最高傑作『素晴らしき哉、人生』のレビューも早くしたいんだけどあの感動はもっと語彙を増やしてからレビューしようと思う。
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