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遥かなる戦場のmhのレビュー・感想・評価

遥かなる戦場(1968年製作の映画)
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クリミア戦争(1853-1856)の中盤で起きた、バラクラヴァの戦い(1854年10月25日)の最中に起きた、軽騎兵旅団の突撃が題材のシニカルコメディ。
・軽騎兵旅団の突撃含むバラクラヴァの戦い自体が有名。
・負け戦であったことを知っている。
そんな教養あってこそ楽しめる作りで、なんも考えてないおれみたいなひとがわーい戦争だあと再生すると、かなり置いてけぼりになる。
戦闘の始まらない前半が特にたいへん。
新聞の風刺画みたいなアニメーションがちょいちょい挿入される。そういう作風ですよという意味合いで、かなり効果的な使い方している。よくできているので見とれてると、その内容が入ってこないけど、クリミア戦争のあらましをやってくれてる。
映画は、
・士官以上の位はおしなべて貴族階級のもの。彼らは軍に金を払い続けている。その見返りとして地位と名誉を確保しているみたいな側面がある。
・有能な叩き上げ士官であっても、給料貰って戦争やってる卑しい連中。
・イギリスにとってクリミア戦争の前は、ワーテルローの戦い(1815年)と長いブランクがあった。
などいった当時の軍隊事情を、無能な上官たちの言動を中心に描いている。
さて、この映画で扱っているバラクラヴァの戦いは三段階あって、
①シン・レッド・ライン(少ない人数でロシア軍の撃退に成功)
②重騎兵旅団の突撃(イギリス大勝利)
③軽騎兵旅団の突撃(敗走するロシア軍に対して、イギリス大損害)
結局全体的には、勝利という認識でいいみたい。
2列縦隊のレッドコートだからシン・レッド・ライン。テレンス・マリックの同タイトルの映画は、また別のシン・レッド・ラインというタイトルの小説から。
原題がこの映画と同じ、邦題「進め龍騎兵(1936)」は、上の②が題材になっているとのこと。なので、続き物として見ることもできるとのこと。まーた視聴困難かよと思ってたらアマプラに来てんのか。じゃああとまわしかなー。

後半の戦闘は大迫力。
引いた画でバグパイプの聞こえる近代戦をやってくれる。
これまで散々やってきた老害描写、パワハラ描写もここに極まって、無能な上官の代わりに有能な若者たちが次々と死んでいく。
あいつ何おれの前横切ってんの? 軍法会議にかけんぞというくだりが史実通りとかかなりひどい。
ハーラン大尉のウィキペディアがすごい充実していることひとつとっても、この戦いが以下に近現代史にとって重要だったかよくわかる。
有能だった指揮官まで責任のなすりつけを初めるという、シニカルコメディらしい締めくくり方も決まっていた。
テーマに対して実直だし、歴史的にとても意義のある戦いが題材ということもあって面白かった。
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