アン子

トゥルーマン・ショーのアン子のレビュー・感想・評価

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
5.0
レビューが難しい名作。
開始20分で、彼(トゥルーマン)が、その後本物の人生をどうつかみとっていくかが本題なのはわかった。
誰かに見られながらでも安全に生きるのと、隠したいプライバシーを人に見せない権利があることとの比較を描くのかなと思った。
二項対立でレビューすれば分かりやすいんだろうけど、そんな白黒はっきりつけないからこそこれは名作なんだと思う。
嘘の環境で育ったトゥルーマンにとって、番組のプロデューサーが本物のパパだ。プロデューサーはパパであると同時に、彼を生身の役者としても愛しており、いつも頭上から見下ろしてくる。
自然の代表みたいな頭の上の空が、絵で描かれていたと知ったら誰でも不快に思う。
不快だし、絵で描かれた空より本物の方がいいけど、生活で空をさほど眺めない人にとってはきれいな空の絵で、別にここに腰をすえてもいいと思う人もきっといる。役者でない本当の人生だって、環境によって自分自身を縛られることなんてざらにあるし。
冒険せず、安定安心な生活も、どっちを選んでもよかった主人公が、終盤死に物狂いで動きだす。彼にとっては自分で選んだ道だが、それも一つのショーとなっていく。
人生でなにかを選ぶとるという行動は、自分の手で掴みとっていくような、清々しい主体性があるはずだ。その全部が、一つのショーとして終わっていく。
観ている私達も、TVを消した後何かを選びつづけているが、選んでいる私たちの頭上に他者の目があるような、変な後味の悪さがあった。
アン子

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