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トゥルーマン・ショーのKHのレビュー・感想・評価

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
4.5
すでに古典的な作品でSF的設定や構造の面白さに言及するつもりはもう無い。
従ってトゥルーマン視点としての面白さは言わずもがなであるが、もう一人の男の物語であるクリストフの視点、そして観客の視点を描く事こそが、この映画に奥深さを与えている。
この映画は一種のクリエイター論だと思う。クリストフの残酷さと優しさは悪魔的であり、いい作品を作るためには手段を問わず、それでありながらトゥルーマンないしは作品に対しての愛は誰よりも大きい。
すなわちクリエイターにとって作品とは子供のような存在。では作中の終盤トゥルーマンのように巣立っていくとは何を指すか。
それは作品が観客によって解釈されていくことで、クリエイターの支配領域を離れ、作品は作者の意図が介在せずに効果を生み出すことがある。よって優れた作品は作者から独立して1つの人格のようなものを持つ瞬間がある。トゥルーマンがクリストフの作り上げた世界から出ていくことは、これらのメタファーになっていると勝手に解釈した。
また恐ろしいのは最後の最後のシーンで今まで熱心に観ていた警備員?が番組が終わったことで、次の番組を見つけるべく番組表を探しているシーンで終わる事だ。クリエイターが魂を込めて作りあげた作品も、勿論誰かの心に残り続けるが大半の人には、いちコンテンツとして消費される残酷さが描かれている。
物語の作り手としてのクリストフの孤独さと、才能があり世間が認める限りにおいてそこに居ることが許される業界の厳しさがひしひしと感じられて切ない。
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