Fal2018

SADO TEMPESTのFal2018のレビュー・感想・評価

SADO TEMPEST(2011年製作の映画)
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青山真治『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』(2005年)を彷彿とさせなくもない、ディストピア×音楽映画。ロック・ミュージックを「ミームとしての民主主義」(文化人類学者のデヴィッド・グレーバーがそういう話をしてたと、どこかで読んだ)のメタファーとして用いている。まあ別にいいんだけど、それはシェイクスピアというよりはP. B. シェリーじゃんと思った。

シェイクスピアの『テンペスト』は現代では西洋による非西洋世界の植民地化との関連で論じられことが多いわけだけど、最初は念仏(オリエンタルなもの)のように唱えられていた「おにひとくちの雨のよに」という言葉がロック・ミュージック(西洋文化)に昇華されることによって春(民主化)を呼ぶ力を得るという展開はけっきょく西洋中心主義を無批判に繰り返すことになってないか?というのはあって、エンディングはやや物足りなさが残った。

しかしミームとしての民主主義、抑圧からの解放が歌(詩)を媒介として広まっていくというアイデアを物語としてスキっと構造化して見せつけてくれたので、個人的には頭のなかが整理されて良かったです。

お医者さん(ゴンザーロー?)が知り合いの先生によく似ていてちょっとツボでした。
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