HiromiA

チャップリンの殺人狂時代のHiromiAのレビュー・感想・評価

チャップリンの殺人狂時代(1947年製作の映画)
3.5
 一人殺せば悪人で100万人殺せば英雄とか、世界は大量殺人のための破壊兵器を作っているのでその点で自分はアマチュアですとかそういった台詞が有名ですが、「独裁者」ではまだコメディ要素の残っていたものがすっかりシリアルドラマになり、反戦へのメッセージ性の強い作品になっていました。しかしそれ以上に、ハンサムでもないヴェルドゥ氏がどうやって女性を振り向かせ、取り入り、結婚したいと思わせるのか、その工程がとても興味深かった。銀行の出納係だから人間観察の眼が肥えたのかもしれないけど、相手の状況に合わせて押したり引いたり畳みかけたりといろいろな手管を駆使するさまは、とっても素晴らしかった。殺さずに貢がせ続けるという手もあったのかもしれないけど、ヴェルドゥ氏の経験から女性の盲目的愛がいつまでも続くわけではないことを知っていたんでしょうね。観客から笑いをとるコメディアンと共通する部分もあるのでしょうね。人心を一時的に掌握することってそれだけでもうやめられなくなってしまうのかもしれません。まあいくら語ってもその罪が消えるものではないのでしょうが、殺人を(戦争に限らず死刑判決も含め)罪悪感なく行っている社会の異常さにはたして陪審員のうち何人が気付いたんだろう。
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