R

チャップリンの殺人狂時代のRのレビュー・感想・評価

チャップリンの殺人狂時代(1947年製作の映画)
4.9
すばらしい!!!👏👏👏 今回で見るの4回目となりましたが、マジで面白い!!!チャップリン最大の異色作!!! にして最高傑作のひとつではないでしょうか。何が異色かというと、チャップリンの作品とは思えない、とんでもなくどす黒きブラックコメディーなのです。チャップリンが演じるのが何と凶悪なサイコパス、次々に人を殺戮していく殺人犯……しかし、本当に極悪なのはこのサイコパスなのだろうか、このサイコパスだけなのだろうか。真の殺人狂とはだれなのか。何なのか。非常にコントロバーシャルなテーマを、さすがチャップリンの軽快なテンポと明快なユーモアで魅せてくれます。そして、最終的に三種の殺人をもって、殺人狂時代を見せてくれる。けれどその前に、冒頭、オープニングクレジットで、監督チャップリン! 原案オーソンウェルズ! 同じ画面に並んでるレジェンドたち!!! おおー👏上がりますねー。幕が上がると、とある商家の夫人であるセルマというおば(あ)さんが、莫大な額の預金を引き出して失踪。どうやらとある老爺と結婚して逃亡したらしく、現存するその男の唯一の写真を見てみると、なんとそれがチャップリン笑 舞台は1930年フランス、忍び寄る恐慌のため何十年も出納係として勤めてきた銀行でのポストを失ったムッシュ・ヴェルドゥは、裕福なおば(あ)さんと結婚しては、そいつを殺害し、財産を我が物にして株に投資をする、ということをやり続けている。そんな男をチャップリンが演じている。セルマさんも彼の毒牙にかかった様子。大金を手に入れた彼は、当時使われていたサイズ(?)の大きな紙幣を、すさまじいスピードでカウントしていく! その様のおかしさといったらない!!! てか、昔ってそのサイズのためか、お金がほんまに手形みたいに見えますねー。現代のわれわれから見るとお金っぽさが感じられない。今の方が金券って感じがしますよね。ま、それはおいといて、さらにセルマのあとも誘惑と殺害を淡々と画策。やばすぎる男なわけだが、それでもチャップリンは次々に婦人たちの心を掴み、重婚に重婚を重ねる。なぜチャップリンみたいなちんちくりんがそんなに婦人たちにモテるか。その理由は、中盤に描かれます。これは非モテ男子への大いなる参考になるのではないか、と思いきや、ルッキズムと拝金主義の行き渡った現代では、ベルドゥの手法は通用しないでしょう。ぱっと見おっちょこちょいでひょうきんな彼が、なんのためらいもなく金のために女たちを誘惑し、殺し、何でもないことのように飄々と暮らしてるのを見ると、チャップリン独特の雰囲気も手伝って、完全なるサイコパスに見える。そのハートのなかにはさぞどす黒いものが渦巻きまくってるんだろうと思いきや、30分過ぎたあたりで、あっと驚く事実が明かされる。最初に見たときは、声出たのを今でも覚えてる。実は、彼の中にはその所業の恐ろしさとはうらはらの、聖なる一面が……。このあたりにチャップリンの卓越した人間観が垣間見えますね。この世に完全なる悪人なんて存在しない。どんな人間の心にも善と悪が、聖と邪が組み込まれている。そのうちのどちらが表面に現れて活動するかは、人間の意志と彼の生きる世界とのダイナミックな相互作用によって変化するのだ。いやー、素晴らしい。まさか殺人鬼に感動させられるとは。個人的に本作で大変気に入ったシーンがふたつありまして、一つ目は途中からベルドゥ氏を怪しんで追跡する刑事さん(チャップリンとの身長差がすごい)を○○するところ。このシーンのハラハラ感と笑いの融合めちゃくちゃいい!ふたつめはチャップリンのコメディアンとしての鬼才が見事にスパークするボートシーン!!! この面白さと言ったらない!!! ボートから突き落として溺死させようと画策するチャップリンを、アナベラが振り返ったときのチャップリンの反応!!! 不意打ちすぎて笑い転げました🤣 あと、アナベラを演じるマーサレイのキャラとだみ声!川をのぞき込んで、いるわ!化け物よ!は死ぬかと思った!🤣🤣🤣 サイコー!!! そして終盤、笑いの山をもう一つ超え、ベルドゥ氏の計画の成果が出揃ったところで、本気モードのチャップリンがガツンと食らわせてくる。真の殺人狂とは……かの有名なチャップリンの名言にしびれたあと、一番最後の最後のショットで、さらにもうワンプッシュ、日本国でも歓迎されている殺人で幕を閉じる。そういえば、前半で、暴力は暴力を呼ぶ……ってベルドゥ氏言ってたよね。よくできすぎてるわ!!!さすがです!!!チャップリンの作品のなかではあまり目立たない本作ですが、僕的には最高傑作のひとつだと思ってます。また見たい。何度でも見たい。
R

R