プレコップ

チャップリンの殺人狂時代のプレコップのレビュー・感想・評価

チャップリンの殺人狂時代(1947年製作の映画)
4.0
これまでのチャップリン作品の中ではかなり真面目な方で、コメディを抑えめにした一作。笑えるシーンもあるが、非道な殺人者をどれだけ笑っていいのか微妙な気持ちになる。

命より金が重くなった世界に警鐘を鳴らすメッセージは今作の終盤にかけてとても重要なテーマを持っている。しかし、その問いかけは「独裁者」の演説シーンのように感情的なものとは違い、裁判所や処刑前のところで淡々と喋るだけになっている。無駄なエモーションを排しているからこそ純粋に伝わる側面もあるが、ヒトラーの扮装をしたチャップリンの演説が見られる「独裁者」ほどエンターテイメント的には上手くいっていないとは思う。

また、今作はチャップリンの中では長尺であるが、その半分以上がチャップリン演じるヴェルドゥの手口を観るだけなのでやや鈍重な感じがした。

だが、これまでの作品とは異なる演出や構成に挑戦している。チャップリンが制作した過去のどの作品とも被らない、新発見に満ちた一本であることは間違いない。
プレコップ

プレコップ