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チャップリンの殺人狂時代の犬のレビュー・感想・評価

チャップリンの殺人狂時代(1947年製作の映画)
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今も尚、様々な文化に於いてオマージュとして引用される有名な台詞が際立っていることやモデルとされるシリアルキラーの青髭ランドリューよりも純粋にチャップリンのフィルモグラフィを通じて役割も構図も脚本も平面的だったものが立体的に広がり良くも悪くも奥行きが感じられた。それは勿論、『サーカス』や『街の灯』から既に複雑な動線を動き回っていたのだが、今作では結婚式場でアナベラと鉢合わせてしまい腹痛と称して奥にある扉を開き塀を飛び越えて逃げる構図が顕著であり唸る。『独裁者』も相当な意欲作だったが、これまでの象徴的な善良イメージを覆しつつ、それでも要所要所にコミカルな笑いを踏襲したスタイルが新境地である不遇の名作。
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