櫻イミト

夕なぎの櫻イミトのレビュー・感想・評価

夕なぎ(1968年製作の映画)
3.5
ロージー監督が「できごと」(1967)でカンヌ映画祭審査員特別グランプリを受賞した直後の一作。原作・脚本は「欲望という名の電車」(1951)のテネシー・ウイリアムズ。エリザベス・テイラーとリチャード・バートン夫妻の数多い共演作の一本。

地中海の島に建つ白亜の豪邸で、不治の病を抱えた富豪未亡人フローラが召使たちと隠遁生活を送っていた。ある日この島に”死の天使”の異名を持つ詩人クリスが上陸する。。。

美しい海から豪邸内にカメラを引いてくるファースト・カットから、しばらくは全カットに目を奪われた。ロケーションと美術がアバンギャルドかつ美しく、これはロージー監督作品で一番好みかも!と期待しながら観続けた。しかし、後半になって物語が転ずることがなく、結局最後までもったいぶったまま終幕してしまった。

紺碧の地中海と白い豪邸、周辺に並ぶモアイ像、小人の召使い、歌舞伎や侍の衣装など、個人的に大好物な悪趣味で美しい理想的な映像が繰り広げられていただけに実に残念だった。

テネシー・ウイリアムズの原作脚本は「欲望という名の電車」も「去年の夏 突然に」(1959)も、テーマや世界観には惹かれるのだが映画としては盛り上がりきらない印象。本作も同じなので自分には合わないのかもしれない。
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