甲冑

夕なぎの甲冑のレビュー・感想・評価

夕なぎ(1968年製作の映画)
4.5
ロージー作品には常々三つの主役…主役、侵入者、そして建造物、を感じてしまうのだが、今作は三者ともに強すぎ。世界指折りの金持ちであり過去五人の夫と別れ(死別?)、深刻な病に冒されるも「人生は全て記憶」と回想録を作るフローラ・ゴーフォース。Angel Of Deathという『第七の封印』の死神のような、しかし鎌ではなく刀を携えた介錯人の如き風体の侵入者。そしてナポリ湾の孤島(島ごと所有物)にそびえるウルトラモダンな大邸宅。最初から最後までひたすら不穏で、男が事あるごとに呟く謎の言葉「BOOM」は生死の境界が想起される。リズはチョチョン♪と歌舞伎に興じてみるも西洋の傲慢な支配主義や物質主義を感じさせるしバートンは東洋を象徴している様にも思える。ロージー本人も今作の言語化には手こずっており、ただひたすらにテネシー・ウィリアムズの世界を表したと言っているが脚本を超えた観念的なアプローチが素晴らしい。『牛乳列車』のテキストを読んでみたい。
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