戦争で家族を失ったのは、イワンだけではない。
彼の周りにいる大人たちも等しく大切な人を失っただろう。
しかしこの映画で狂っているのはイワンだけだ。
それは何故か。人生を諦めていないからだ。
戦争を始めたのは大人だが、兵士である彼らもまた被害者であることに違いはない。
大人である彼らは、戦争はいつかは終わること、人は人生のどこかで必ず死ぬことを受け入れているからこそ、次の世代を担うイワンの生を願う。
しかしそんな大人たちの戯言は、イワンの耳には届かない。
皮肉にもその強すぎる意志と、先のことを見ることもできない狂気とが錯綜し、彼は破滅した。
まるで大人たちに決められていたように。