ピュンピュン丸

大怪獣決闘 ガメラ対バルゴンのピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

4.8
ガメラ2作め。ガメラ映画の最高傑作にして、怪獣映画の『金字塔』。

おそらく、これを超える怪獣映画はもう出まい。造り込みが丁寧で、喩えるなら、よく出来たブリキの玩具のような映画だ。

脱サラした飛行士の平田圭介(本郷功次郎)は、自分の会社を興す資金にするべく、兄が戦時中に洞窟に隠したという時価4億のオパールを、仲間とともに見つけ出し、日本に持ち帰ろうとする。しかし強欲な小野寺(藤山浩二)に裏切られ、オパールを取られてしまう。しかし、オパールだと思ったその宝石は…。

バルゴンの卵に赤外線があたり、孵化する様子が印象的。子どもの頃に見て以来、ずっと脳裏に焼き付いている。

冒頭、ガメラが黒部ダムに現れ、その後、バルゴンの移動経路に従い、神戸→大阪→琵琶湖と場面が展開していく。その土地土地の特撮用ジオラマに釘付け。それと、大坂城が真っ白な雪に覆われ、そこにバルゴンと死にかけたガメラとが横たわってる絵はまさに芸術だ。この手の絵は、『仮面の忍者赤影』でよく見たような気がするが、自分は大好きだ。

ガメラvsバルゴンの戦いの緻密な描き方にも感服。怪獣2体が揃っても直ぐに戦うわけでなく、動物の本能よろしく、暫く遠巻きに対峙したり、攻撃する前の小さな初動から描いていたりと素晴らしい。今回の鑑賞で改めて気付いたが、ガメラの回転ジェットは決して飛翔するために生まれたものではない。仰向けにされたら起き上がれないという亀の欠点を補うべく進化した姿なのだ。バルゴンがガメラを仰向けにしようとする戦いから気づいたよ。(笑)

バルゴン掃討作戦の論理性がいい。もちろん子供だましなんだが、さもご大そうな理論的な裏付けを用意していて、へーッと笑いながら感心してしまう。雨に弱いバルゴンを足止めして時間を稼ぐ人工雨作戦、そしてダイヤモンドの光でバルゴンを誘い、琵琶湖の湖底に沈めようという作戦、バルゴンの背びれから放たれる虹の破壊光線を反射させてバルゴン自体にあてようという作戦。オモシロい、面白すぎてワクワクする。それから、それらの作戦を実行に移していく自衛隊の自然なキビキビした動き。学者などの専門家や民間人から有用な意見を吸い上げ、決断し、指示していく自衛隊長官の胸のすくようなリーダーシップが、批判者然とした大阪府知事の姿とは対照的に描かれている。(他の怪獣映画は本作を見習ってほしい。特に最近の怪獣映画の自衛隊の動きはわざとらしすぎて笑止千万だ)

また、映画のなかに描かれている人間ドラマが、それだけで映画として成立するほどの重厚さがある。二体の巨大怪獣が死闘を繰り広げているまさにその足下で、人間たちが欲にしがみつき、醜い争いを続けている小ささがよく描かれている。平田圭介演じる本郷功次郎と、小野寺を演じる藤山浩二の熱演が見応えある。

それにしてもこの頃の怪獣映画のほうが、怪獣に恐れおののき、逃げ惑う通行人の姿がリアルだよな。エキストラとは思えない。とてもいい。

逃げ惑う群衆。道路に落ちた、壊れかけのラジオ。そこから繰り返し流れる臨時ニュース。そんなディテールの効いた演出がこの映画の素晴らしさだ。

たった一つだけ雑なのは、土人の描かれ方。まるで漫画だ。仕方ないけど。(^^)