Zorba

やさしい女のZorbaのレビュー・感想・評価

やさしい女(1969年製作の映画)
4.0
ドアの開閉と階段の登り下り、人や物の移動だけで映画が成り立っている。

ヒラヒラと舞い落ちるスカーフの只事なさ、手渡される石鹸の艶かしさ。ブレッソン映画の「物」の剥き出しさ、グロテスクさは相変わらずエグい。場が張りつめてるにもかかわらず、空気読まないでいつも通りに無機物が無機物してるから存在感が凄い事になってる。特にドミニク・サンダがガンを垂れながらスープ飲んでる時の、地獄みたいな空気の中でのスプーンの存在感よ。お前もうちょい空気よめよってなるw

物を映さない演出もやばい。ドミニク・サンダが銃を撃とうとする時に指輪をした手を少し握りこんで隠してからは、ほぼその指輪が映らない。クロスワードパズル(両手が隠されてまるで手錠をされた囚人のよう)、ポケットに手を入れる、読書中に左手を脇の下に持っていく、介抱中の夫の手などまー隠す隠す。夫の束縛、所有欲の象徴である指輪、それを隠すことによる必死の抵抗。

サル、ハムレット(主役が映画の顔をしてないのもそれ)、カップル、美術品など。夫の呪縛ももちろん原因だろうが、不貞の自分含め、世の中のモノの軽薄さに耐えられなかったんだろうね。まさに存在の耐えられない軽さ。哲学的自殺。最後のクローズアップが忘れられない。
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