すこやか

源氏九郎颯爽記 白狐二刀流のすこやかのレビュー・感想・評価

3.8
加藤泰のローアングル・ローポジションの美しさは健在ながら、『車夫遊侠伝 喧嘩辰』を見たあとでは、物語を性急に語ろうとするあまり、演出の随所に焦りが感じずにはいられない。

映画の語りが性急であるとは、アクションやセリフ、カッティングのスピードがあまりに早く、視覚・聴覚による認知の処理が追いつかないということではない。そうではなく、映画の語りに必要な要素があるべき箇所から排除され、ショットやシーンのあいだに認知の空白とでもよぶべき断絶が無造作に挿入されたとき、私たちは制作者の焦りを感じてしまう。性急であるとはそういうことだ。

役人に捕縛された仲間を悪徳貿易商人の妻である八汐路佳子が屋敷二階から狙撃して射殺し、これを捕らえようとするも、階上に通ずる梯子が閉ざされるシーンから、播州屋が密貿易した拳銃の詰められた木箱を萬屋錦之介が馬上から奪うシーンは、相互の連関が存在しない、いかにも性急な演出だろう。
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