yawara

3時10分、決断のときのyawaraのレビュー・感想・評価

3時10分、決断のとき(2007年製作の映画)
5.0
囚人護送の歴程にて、護送される当の本人である強盗の頭目と不具のカウボーイの間に形成されていくある種のシンパシーを描き出す。リメイク作だが、原作は未見。

簡素な言葉のやり取りで、バックボーンを強く訴えるキャラクター描写が見事。さらには徹底されたルックと、順当でしかし勢いのある音使いがプロットを大いに彩る。美術はもちろん小道具もたいへんよく、ウェイドの銃に刻まれた十字架や、ダンがお守りとしているブローチなどそれぞれがエピソードを強く印象付けている。

過去の裏切りのために自らを誇れない二人の男の悲しい生き様は、乾いた土の香り漂う世界観で深く交わっていく。ウェイドがダンをスケッチしたのは、やはりそこに美しさを感じたからだろうか。ダンもまた、ウェイドを単なる悪党と見なしてはいない。類を見ない複雑な関係性に、言い表せないロマンがある。このロマンとリアリティの掛け合わせがこの作品の醍醐味と云っていい。

作品を通して痛みという概念が深く掘り下げられている。愛する家族を守る痛み、戦う者の痛み、あるいは過去に受けた古傷の痛み。また、キリスト教的な思想の上では祈りが全てを救うが、この作品内では祈りは何も救わない。救いは求めるものでない。自分の信念は必死で貫くほかない。
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