LalaーMukuーMerry

3時10分、決断のときのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

3時10分、決断のとき(2007年製作の映画)
4.4
魅力的な悪人が出てくる映画は面白い。セリフの端々から、教養があって世の中がクリアに冷徹に見えていて、常識とは反対のことを平気で言うが、言ってることが間違ってないから憎たらしい。薄っぺらな正義をふりかざす者は、彼には全くかなわない。この西部劇の主人公、無法者グループのリーダー、ベン・ウェイド(=ラッセル・クロウ)はそんな男だ。
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もう一人の主人公ダン(=クリスチャン・ベイル)は、捕らえられたベン・ウェイドを、ユマ(絞首刑の地)行きの列車に乗せるため、近くの駅まで(といっても150kmもある)護送する仕事を保安官に買って出た。悪党グループがベン・ウェイド救出のため襲ってくるのは確実という危険な仕事だが、ダンにはどうしてもお金が必要だった。
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従軍した南北戦争で脚にケガを負ってから、満足に放牧の仕事ができず、借金に苦しむ暮し。妻と息子にも冷淡にされ父親の威厳がぐらついていたので、まっとうな道を踏み外すことなく、一発逆転を狙うしかなかったのだ。
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護送とは、いかに悪人であっても無事に送り届けてナンボの仕事。その極悪人は、護送の報酬よりも何倍ものお金を提示して自分を逃がすようにそそのかしてくる。追手の悪党どもの襲撃もすさまじい。それでも悪人を命がけで守らなければならない。護送する者とされる者、二人の男の間に生まれる化学反応・・・
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家族を守るため、命を懸けて父親の責任を果たそうとするダンに、ベン・ウェイドは何を感じたか・・・。腰抜けの保安官たちよりもずっと意思も勇気も強かった父親、その背中を見てダンの息子は何を思ったか・・・
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終わってみれば、西部の父親像にグッと胸が熱くなる一本でした。
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<おまけの雑学>
はじめの方に機関銃が登場するので、西部劇に機関銃? と不思議に思うかもしれないが、初めての実用的な機関銃であるガトリング砲が史上最初に使われたのはアメリカの南北戦争だ(1861-65)。だから時代的にはこの映画に登場しても不思議はない。

ちなみに、日本で最初にガトリング砲を実戦使用したのは、そのわずか数年後の(明治維新)戊辰戦争の時、長岡藩(幕府側)の河井継之助。日本は当時の人が感じていたほど遅れてなかったともいえますね。