りょう

アサシンズのりょうのレビュー・感想・評価

アサシンズ(1997年製作の映画)
4.4
 1997年のカンヌで賛否あったという記憶しかありませんが、当時はポスタービジュアルがカッコいいというだけの理由で観ました。かなりハマってしまい、数年後にDVDを購入していました。いまとなっては、たまたまレンタルの店頭になければ、ほぼほぼ観られない状態で、まともにレビューされた記事もないようですが、それではあまりにもったいない秀作です。
 初老の暗殺者であるヴァグネルが後継者をさがし、たまたま出会った青年のマックスにその稼業を承継していくというだけの物語です。ちょっと頼りないマックスとは対照的に、後半に登場する13歳のメディは、天性の暗殺者とも思える風格と顔立ちで、彼の結末とともに妙に恐ろしい印象です。
 いわゆるアクション映画ではありませんが、カメラワークがアクティブなところと冗長に感じられるほどにスローな描写のメリハリがあります。カメラがパンして時間の経過を表現したり、この当時では高度な技法の映像も少なくありません。マックスやヴァグネル、暗殺の犠牲者の自宅など、あらゆる室内のシーンでは、必ずテレビがついてます。その番組がうんざりするほどくだらないし、しかも音声が妙に騒々しい…。ここまで意図的な演出に終始イラっとさせられ、テレビ嫌いには耐えがたいところですが、登場人物の精神状態も反映しているし、かなり重要なアイテムです。
 彼らはプロの暗殺者なのに、現場には証拠を残しているし、死体も処理せず放置するなど、こういう映画にありがちな表現をあえて排除している印象です。暗殺者なのに報酬がよくないのか、低所得者層のように生活しているところもリアルです。マックスの母親以外に女性が登場しない設定に違和感がありますが、そんなツッコミを無視できるほどの演出と映像のセンスが当時のマチュー・カソヴィッツ監督にはありました。すっかり俳優としての活動がメインになってしまっているのが残念です。
 この作品がここまで過小評価されている理由はわかりませんが、せめて配信などで観られるようにしてほしいです。
りょう

りょう