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オテサーネク 妄想の子供のmのレビュー・感想・評価

オテサーネク 妄想の子供(2000年製作の映画)
4.0
なにかを欲しがる時人は狂気的になれるものなんだろうなと感じた作品。グロテスクではないが見てはいけないものを見ているような意識にさせられる。

『アリス』で惚れたヤン・シュヴァンクマイエル監督の作品。ようやく観れて嬉しい。監督らしくダークな世界をポップに描いていて楽しかった。
今作は『アリス』的な、ビジュアルで魅せる作品では無くあくまでストーリーがある作品。そして監督っぽくないというと語弊があるが、分かり易い話になっていて置いてきぼりをくらわないのが有り難かった。

言っちゃいけない冗談ってこの世にはあるよね。と不妊の原因になったカレル(ヤン・ハルトゥルさん)に腹が立ってしまった。ボジェナ(ヴェロニカ・ジルコヴァさん)のメンタル面考えたことあるのだろうか?と。でも、メンタル面を考えた、妻を思ったが故のカレルの冗談だったんだろうなと思うとやるせない。
そこから狂っていくボジェナに胸が苦しくなった。もし不妊治療に悩んでいる人がいたら観ない方がいいと思う。どれだけ周りが狂っていると思っても、不妊治療中の暗い顔付きから明るい表情になったボジェナを見て、正気ってなんだろうか?と考えてしまった。

後半は不妊治療から変わり、オティークを巡る人間模様が描かれていく。
アルジュビェトカ(クリスティーナ・アダムコヴァさん)の性に対する執着。セックスの知識が豊富でその類の本を読んでいる。最初は、触れてはいけない物に触れている(知識があっでもいいが、所謂タブーの部分を触っている彼女を気持ち悪いと見てしまう)感覚があり、監督の意図はどこにあるんだろうと思っていた。終盤になって「あー、友達(世話を焼く妹とか弟)欲しかったんだな」と理解出来た。

アルジュビェトカとボジェナに共通することはなにかを欲しいと思ったらなにかを犠牲に出来るとこだと思う。(オティークの餌を巡ってアルジュビェトカはグロい選択をしているし)そこが人間らしくまた汚らしくて好きだった。

好きです。観れてよかった。
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