JTKの映画メモ

彼岸花のJTKの映画メモのレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
4.0
小津最高。
ストーリーは金太郎飴なんで、色彩のことなど。
オープニングのいつもの布のタイトルバックに「アグファカラー」と記してあって、へー、と。コダックや富士はよく見かけるがアグファは珍しいな、と。そのせいか何なのか暖色系というか赤味が強めで暖かい感じがした。

モノクロからカラーに移行したばっかの映画作家は、たとえば黒澤明の「どですかでん」などはまるで原色の絵の具を塗りたくったような色の使い方をしてて、それはそれで明快で良かったが、やはり小津の場合はもう少し抑制されとるわな。
とはいえ、日本的な家屋の色彩の中にもポッと赤が差し込んであったりするとこが効果的で美しい。人物の背景に小さく映る缶の赤、人物の帯の赤。公園のベンチの文字の赤。ほとんどと言っていいほどのカットに赤が差し込んであった。これも小津の美学。
赤だけでなく、中華屋のメニュー短冊などは黄赤黄赤と交互に壁に貼ってあって、それも美しい。

NHKでやってた小津のドキュメンタリーを見たが、小津はセットの飲み屋の看板のフォントまで自ら書いてたそうな。
この病的なまでの拘りこそ、小津のスタイル。

ここまで潔癖で拘りの強い人が他人と暮らせるわけがない。
それを一番良く知ってたのは小津安二郎自身に他ならない。
小津の描く「家族」は、小津の畏れと憧憬の現れだと思う。