8Niagara8

彼岸花の8Niagara8のレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
4.6
佐分利信と浪花千栄子という図太い二つの軸があり、田中絹代が昇華させる。この3人が傑出し、画面に途轍もないエネルギーをもたらす。その点とても攻撃的だ。
娘を嫁に出すということはあまりにも多義的で、感情的なものである。
それは家のことでもあり、家族のことでもあり、そして、その歳まで育ててきた親本人たちの謂わば集大成なるものである。

理性的に話す分には恋愛を謳歌する若き娘を受け入れられるのだが、実娘となると訳が違う。感情とか言語とかでは説明がつかないような、血の繋がりのしがらみが明らかにある。
後半にかけての夫婦の矛盾し続ける会話がそれを見事に可視化させる。
側から見ればもどかしいものだが、小津らしく、あまりに感傷的な家族の崩壊は痛みを感じさせる。
カラーの色味も叙情的で、今の視点でみるとどこかノスタルジーを帯びる。
8Niagara8

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