海

彼岸花の海のレビュー・感想・評価

彼岸花(1958年製作の映画)
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祖母の家で知った。横になってうとうとしていたわたしの姿が、ひとには眠ってるように見えてたんだろう。ぽつりと祖母が「きれいな体ねェ。死んだおばあちゃんもこんなやったねェ」と言った。父方の祖母。母をひどく苦しめたひとだった。わたしは顔も覚えていないけれど、そうか、そんなひとにわたしは似ているのか、と思った。だからみんな、わたしを見るたびに思い出しているのか、と。驚きはしなかった。ただなぜかかなしかった。母はいつもわたしを褒めてくれた。きれいだね、かわいいねと。心の中にどれだけの愛情があれば、母のようになれるだろうか。いまではわたしも鏡の前に立つたびにそのことを思い出し、母の愛情の深さと、血のつながりの不思議について考えるのだった。 この週末、伯父の家に行った。伯父に、「おれが死んだら、腕時計おまえにやるよ。金と同じで、多少傷が付いとっても価値は変わらんよ」と言われた。「じゃあ、生活に困ったら質屋に持ってくね」と笑った。真鍮を金にするのが夫婦ならば、家族とは何だろうか。結婚の前にかならずある、母や父との時間は何に例えられようか。わたしにはわたしの倖せがありますが、それはちゃんとあなたの倖せでもあるのだろうか、と、いつも同じくらい考えています。
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