似太郎

ザ・ヤクザの似太郎のレビュー・感想・評価

ザ・ヤクザ(1974年製作の映画)
5.0
【忘れられぬ人々⛩】

原案・脚本があのシュレイダー兄弟とくれば、日本映画っぽくなるに決まってる。ロバート・ミッチャムと高倉健の二人の義理人情の深さに泣く、ワーナーと東映の合作映画。

ブルース・リー主演の大ヒット作『燃えよドラゴン』に次ぐオリエンタル路線第二弾❗️

山下耕作の『博奕打ち・総長賭博』や深作欣二の『解散式』など、東映やくざ映画ならではの様式美をアメリカ流に解釈したとも言える異色作。

シドニー・ポラックの映画は『追憶』や『コンドル』もそうだが昭和の香りがどこなく漂っていて良い。まるで本物の日本映画を観てるような感覚に陥った。

国辱映画?とんでもない。元祖『ブラック・レイン』みたいな作品で任侠映画へのオマージュたっぷりの出来栄え。アクションよりも人間ドラマに重きを置いている為か、見方によってはルーズな印象も受ける。

主人公ハリー・キルマー(ロバート・ミッチャム)の使う日本語が違和感なく綺麗である。中盤の居酒屋で別れた妻の英子(岸惠子)との再会シーンには思わず涙ウルウル🥹してしまう。この情念の濃さは深作作品にも通じる。

ここまで東映任侠映画の美学をトレースしたアメリカ映画というのも珍しい気がする。やくざ映画ファンの私にとって最高の贈り物である。脚本を書いたポール・シュレイダーに感謝❗️彼の新作『カード・カウンター』も観てみたい。

原作者のレナード・シュレイダーはのちに長谷川和彦と共謀して『太陽を盗んだ男』や相米慎二の『ションベン・ライダー』の脚本を書く訳だが、奥さんのチエコ・シュレイダーと並んで日本映画史を知り尽くしている最重要人物だ。

本国アメリカよりもむしろ日本人にしか分からない、大人っぽい湿り気のある純・邦画といった趣きで摩訶不思議な気分にさせられる傑作。これをマーティン・スコセッシが撮ったらどうなっていたのかな?🤔
似太郎

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