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いも侍 蟹右衛門のニューランドのレビュー・感想・評価

いも侍 蟹右衛門(1964年製作の映画)
3.2
☑️『いも侍·蟹右衛門』(3.2)及び『忍者破り必殺』(3.0)▶️▶️

 松竹というと、蒲田や大船ばかりが思い浮かぶが、時代劇の京都でも老舗の底光りが伺える。元々傍流的な上にこの頃はTV流用ものの多い時期なのに、落ちぶれ感どころか、時代の潮流も悪びれず取り入れ、なかなかに楽しく、毒々しかったり·または子供向けっぽくもありも、でも途は外さない、何より描写が手抜きなく丁寧の、意気軒昂の作らとなっている(撮影所閉鎖はこの少し後辺りだが、具体的な経営母胎や製作対象の推移はよく知らない)。キャラが本質的に徹底的な根っこまで持っておらずフラフラしているようにも見えること多で、見終わって流石に押しや余韻までは届かないが。長門勇主演の2本、浅草からTVの人気者となったとはいえ、割とすぐに主役に·しかし軽めに持ってくるのが、松竹的か。
 1本目は、ファンでもない割に目にする後のTV『必殺』シリーズの工藤や蔵原と並ぶメインディレクターの作で、コンパクトに次々に目先を移してく。当時ブームのマカロニ·ウエスタンのようなクセの強いようで結構正統の後味は、アウトロー時代劇の重鎮·犬塚の脚本、外したゆとりや·いくつかの旅の目的が絡まり終着で集約される因縁と地理的裁きがいい。パンフォーカス的画面をうねらす、強烈な照明と深いコントラスト、美術の格と人の配置の動き。長門の身体能力と岡山キャラ、それを固める脇も多彩でいいポジショニング。ズーム·望遠·揺れ傾き図の現代味、ロー·俯瞰図·手持ち揺れ兼ねた移動らのカメラのダイナミズム、豪雨や土埃·家屋倒壊の効果のそれ、血しぶきのキメと巨大空間や足もとの裁きのケレン、らも貪欲に引入れてる、それでいて過激に走らずおっとり·オトボケ·皆満足納得の風味で纏める。500円の料金分の価値はある。 
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 2本目のルックは平明でわかり易く、『隠し砦~』『大魔神3』のように明朗な·そして視覚的にも変化に富んだ、少年向けでもいい冒険譚、誰にも親しく近しくといったところで、カルトと最も程遠いが、戦国時代·弱点持ち(酒好き)·忍者見せ場·空手アクション·恋変転·師弟らサークル·間抜けユーモア·疑り騙し錯綜·子供愛嬌、と飽かせず詰め込んでる。TV流用は今回は『隠密~』テイストが強いが、何よりバカバカしいことへ、ちまちませず、スタントマンとのカット繋ぎも懸命で、木部への手裏剣刺さりも恥ずかしがらず、(自然を模したのも)セットもタップリ感、と倹約感がない心地よさが惹きつけ、面白い。
 '60年代も後半になると明らかにショボくなるが、この頃は時代劇も、正樹·黒澤·沢島·泰·三隅·一生·工藤·喜八·更に木下·崑らが、表現の革新·価値観の新機軸を、TVのブームに従う部分を持ちつつも、撮影所はなんとか健在で、大胆に開拓してた時代。松竹京都も自社調を守りながら·TVのアットホームを引き入れ、決して後退りはしていなかった、といったところなのか、はっきりした実感の記憶などはないのだが。
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