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コーマン帝国のSariのレビュー・感想・評価

コーマン帝国(2011年製作の映画)
3.7
2024年5月9日、98歳で死去したB級映画の帝王、ロジャー・コーマン。
監督作50本以上、プロデュース作は550本以上にも及ぶ。

有識者に眉をひそめられるような内容の娯楽作品を世に放ち続け、そのほとんどを黒字に収め、当時若手だったジャック・ニコルソン、フランシス・フォード・コッポラ、ピーター・フォンダ、ブルース・ダーン、ピーター・ボグダノヴィッチ、ロバート・デ・ニーロ、マーティン・スコセッシ、ロン・ハワード、ジョン・セイルズ、ジョー・ダンテ、ジョナサン・デミほかの俳優、脚本家、監督を世に送りだした功績は、映画史上に燦然と輝く。

本作は、豊富な作品映像と多くの「門下生」への豪華(&内幕暴露)インタビューで構成され、ロジャー・コーマンの栄光の人生を辿る。
パーティーシーンで一瞬出演のルーカス、スピルバーグや、なぜか大はしゃぎのタランティーノまで含めて、現在のハリウッドの中核を担ってきた人々が、如何にして今のキャリアを築いたかのバックステージをのぞきこむようで興味深い。

スコセッシが、ロジャー・コーマンのキャラクターについて、「あんな映画を撮るように見えない、どこかの大学教授のよう。」と言っているように、知性に溢れ穏やかな佇まいで慕われていたのが分かる。ジャック・ニコルソンがインタビュー中に泣いていたのが忘れ難いが、コーマン監督の訃報を受けて悲しむ姿が目に浮かぶようだ。

ロジャー・コーマンは自身の作風と、好きな映画のタイプが異なるのが興味深い。例えばフェリーニ、ベルイマン 、アントニオーニ、トリュフォーや黒澤明などを好んだとのこと。
『叫びとささやき』をアメリカで配給公開した際にドライブインシアターで上映したらしい。ちょうど上映作品が足りない時期で儲かったとのこと。後にベルイマンと会った時にはかつてなく自作を幅広い観客に届けてくれたと感謝されたというから流石だ。
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