櫻イミト

禁じられた恋の島の櫻イミトのレビュー・感想・評価

禁じられた恋の島(1962年製作の映画)
4.0
ナポリの小島を舞台に少年の恋と自立を描く思春期映画。監督は「群盗荒野を裂く」(1966)のダミアノ・ダミアニ。主演女優は「若い娘」(1960)のキイ・ミアスマン(当時16歳)。音楽は「鉄道員」(1956)などで知られるカルロ・ルスティケッリで、テーマ曲は日本でヒット。

小島で暮らす15歳の少年アルトゥーロ。母親は彼の出産時に亡くなり、大好きな父親ウィレムは島の外へ出てたまにしか帰ってこない。そんなある日、父親が17歳の信心深い新妻ヌンツィータ(キイ・ミアスマン)を連れて帰ってきた。しかし父親はすぐにまた出ていき二人での生活が始まった。ヌンツィータは妊娠していた。。。

小島の古い街並みロケーションが抜群に良い。海岸の十字架や廃墟の様な住処は”イタリアン・ゴシック”とでも呼びたくなる風情。ロッセリーニ監督のイタリア・ネオリアリズモと共通する美学も感じられる。

物語はツルゲーネフの「はつ恋」パターンだが、そこにファザーコンプレックスと父親の同性愛(当時では珍しいテーマ)を絡め、少年の自立を詩情豊かに描き出している。

母性と少女性を兼ね備えた役どころを演じたキイ・ミアスマンは、ヘタウマな演技だが唯一無二の存在感を放っていた。出演作は「若い娘」と本作のみ。「情婦マノン」(1948)をミアスマンで撮っていたら傑作になった可能性があると思う。

忘れられている60年代イタリアの名作。

※脚本協力は「靴みがき」(1946)「自転車泥棒」(1948)のチェザーレ・ザヴァッティーニ
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