みかんぼうや

野菊の如き君なりきのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

野菊の如き君なりき(1955年製作の映画)
3.7
皆さま、本年もよろしくお願いいたします。今年も変わらず映画&フィルマライフを楽しんでいこうと思います。
(今日アップする4本は、2023年末に観た作品です)

「二十四の瞳」、「永遠の人」の木下恵介監督4本目の鑑賞。いとこの男女同士で惹かれ合う切なき恋物語。

ダイバーシティという言葉が当たり前のように使われ、さまざまな恋愛の形が世間的に認知されつつある現代でも、いとこ同士の恋愛はまだまだ奇異の目で見る人が少なくないと思いますが、この作品が作られた1950年代は、今とは比較にならないほど周りの反応は厳しいものだったでしょう。

そんな時代のいとこ同士の恋物語が、さすが木下恵介監督という安定のストーリーテリングで描かれていきます。世間の恥と言わんばかりに厳しくあたる兄嫁夫婦、それでも2人の本当の想いを理解しようとする母親。その中で2人の運命はどうなるか。1時間半強ですが、予想外で奇を衒った展開や演出はない、まさにストレートな純愛を描いた、“シンプル・イズ・ベスト”な作品です。

ただ、これまで観てきた木下作品に比べると、人生ドラマとしての“溜め”はやや弱め。他作品は、前半からの溜めを効かせて、ラストで一気に感動や人間ドラマとしての濃さが押し寄せますが、こちらはどストレート過ぎる故か、良くも悪くも裏切りがなく、その結果として作品のフックも他作品よりはやや弱めで、これまで観た作品に比べると物語的にややあっさりとした印象でした。

とはいえ、あくまでも“木下作品の中で比較した場合”であって、十二分に昭和純愛の美学溢れる作品でした。

ちなみに、作品全体は73歳になった主人公政夫が昔を振り返る構成ですが、その73歳の役を演じたのが、笠智衆。この時、実年齢約51歳。特に特殊メイクをしているわけでもなく、普通に73歳に見える笠智衆、流石です(東京物語の時は49歳というのも凄まじいですが)。
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