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関東幹部会の一のレビュー・感想・評価

関東幹部会(1971年製作の映画)
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ダイニチ映配・日活末期のヤクザもの。なんのためにこれだけ血が流れるのか、実に割に合わない不毛な争いを延々見せられる。ハッキリ言ってぜんぜん燃えない。序盤、寺田組の事務所(壁には『ワイルド・エンジェル』のポスター)で渡哲也が郷鍈治や武藤章生や高橋明をはじめとした若い衆と皆で酒を飲むシーンがあるのだが、そこでむさ苦しい男たちが声を合わせて歌うのが“ざんげの値打ちもない”なのだ。「愛というのじゃないけれど わたしは捨てられ辛かった」。その歌詞の通りに組織に裏切られた寺田組の組員は次々無惨に死んでゆき、渡は自分を捨てた男(青木義朗、原田芳雄)を刺し殺す。やっぱりこの時期のこういう映画だけが湛えている空気感があって、歪であっても僕はそれがとても好きなのだ。自分より強い人間のケツを嬉しそうにペロペロ舐める深江章喜カワイイムービーの一本でもある。どうかしている指詰めシーンだけのために登場する今井健二も◎。
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