Enough

ハート・ロッカーのEnoughのレビュー・感想・評価

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)
3.4
【男はなぜ、死のそばに身を置くのか】

・ストーリー:4
・テーマ:3
・演技・演出:3
・映像・撮影技術:3
・作り込み度:4

戦争映画を描くものの多くは戦いに焦点が当てられがちだが、本作は戦争が市民の生活にどんな影を落としているのかに焦点が当てられていて新しい視点を得られた。実際、爆弾処理の現場で、衆人環視のような状況になるのかはわからないが、お互いの不信感のような空気と爆弾が爆発するのかしないのかの緊張感が画面に惹きつける良い要素として機能していたと感じた。

主人公がなぜ爆弾処理犯になったのか。なぜ、死を恐れないそぶりを見せるのか。なぜ、子供に絡むのか。ストーリーの最後になるまでその動機が明らかにされない点が、ある意味サイコパス的な殺人犯の動機探しをしているような感覚でもあり、全然感情移入できないのにそれが気になること最後まで見させるような演出になっている。

戦争の残酷さを伝えたいのか、大切なものを守る男の話を描こうとしたのか、その辺りのブレは感じざるを得なかった。アカデミー賞で作品賞を受賞しているが、他のノミネートと比べて社会性の高さが評価ポイントだったのか。アバターが賞を総なめするのを抑えたかったか。

ちなみにアバターの製作費は3億に対し、本作は1500万とかなりの差がある。むしろ低予算ながら、カメラワークと役者の演技により見させる映画に仕立て上げているのは見事。

今となってはマーベルで主役を張る二人(ホークアイとファルコン)が共演しているのは、純粋な映画好きとしてはニヤリとしてしまう。
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