深江貞広

ハート・ロッカーの深江貞広のレビュー・感想・評価

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)
3.0
『ハートロッカー』とは『ハートブルー』『K−19』のキャスリン・ビグロー監督がイラクのバグダットを舞台にアメリカ軍の爆弾処理班の活躍を描いた作品。 

2004年夏、ブラボー中隊の班長として赴任したジェームズ。 
新たなリーダーとして着任した任務は、住宅街のモスク周辺で発見された爆弾を解除することだった。 
彼は、班員であるサンボーン軍曹の遠隔ロボットの使用意向を無視し、煙幕を炊きながら、単身爆弾に近づく。その異様なまでに落ち着いている姿にサンボーンや班員のエルドリッジ技術兵は危機感を覚える。 
爆弾駆除を成功させるために冷や汗をかきながら援護するサンボーンは、ジェームズにルールを守るよう指示するが、全く聞く耳を持たない。 
そんな日の翌日には、国連施設前に停車されている車に、不審物が積まれているという知らせが入る。 
任務が明けるまで30日前後、果たして彼らは無事に任務を遂行することが出来るのだろうか? 

果たして、6部門もの賞を受賞するほどの作品だろうか?というのが、個人的な意見だけども、気味の悪い不協和音と緊張感、臨場感は他の映画には全くないものである。爆弾の爆発音や爆発場面は流石と言うべきリアリティで描かれている。 
演出は素晴らしかった。さておき、物語。正直、一言では言い表せない。これは何を着眼点に見るかによって、全然評価は変わってくると思う。 
冒頭に出てくる、戦争は麻薬であるというテロップは正にこの映画の指す一つの問題点である。 
ポール・ハギス監督の『告発のとき』(息子がイラク戦争から帰還したにも拘らず行方不明になり、ベテラン軍人である父親がその行方を捜す実話)の原案も執筆しているマーク・ボールということもあって、このイラクでの戦争が人に与えている様々な影響により人格が狂っている、または狂い始めているのは映画を通して確認できると思う。 
物語には『ブラックホーク・ダウン』同様、この映画自体に意味合いはなく、ただ現実を淡々と忠実に描いている。 
男同士のホモ映画と揶揄されることもあるようだけども、自分は男同士の信頼はあっても、友情は全く感じることはなかったのでこのホモ表現はどうかと思うし、寧ろ主人公と班員との理解できない格差や孤独感がひしひしと伝わる映画だった。 
無作為に爆弾を解除するたびにこの無益な犠牲を出していると考えると虚しいばかりだな。 
深江貞広

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