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ハート・ロッカーのマーチのレビュー・感想・評価

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)
3.5
[『デトロイト』公開記念
映画監督 キャスリン・ビグロー特集 ]

《第1弾》『ハート・ロッカー』

『デトロイト』公開に備え、キャスリン・ビグロー監督の過去作を公開前に3作観ておきたいと思います。そういった特集です😌


【レビュー】

《戦争は麻薬💣》

今作はドキュメンタリーかと錯覚するほど至極淡々と(アメリカ軍)爆発物処理班の日々の任務を映し出しており、そういう特殊な描き方だからこそ様々な事実が浮かび上がってくる。

戦争映画はストーリーを下敷きに展開するのが基調とされている節があるけれど、実際そんなことしなくても緊張感や反戦の意は伝わるし、恐ろしさも感じられるということをこの作品は証明した。この作品が先駆ではないのかもしれないけど、自分が観てきた映画の中では今作が先陣を切っているように思われる。

現実はストーリー仕立てで語れるほど整理されてはいないし、今作にストーリーが全く無いという訳ではないけれど、“リアルはそんなに甘くない”ということをこの作品は教えてくれた。そしてそれがまたフィクションであることが逆説的で面白い。

日々の戦々恐々とした任務こそが日常だと普通の人々の生活が非日常となり、その危険な日常が普通の人々からすれば恐怖に感じられ、そんな場所に態々戻ろうとする姿は戦争中毒だと思われるだろう。だが、戦地に生きる彼等の中には非日常に身を染めることの方が恐怖だと感じ始める者もいるのだ。そういう戦争の暗部、謂わば“闇”を鬼気迫る描写の連続で、この作品は映し出している。

そして兵士はまた、戦地へ赴くのだ。


【p.s.】
タイトルはアメリカ軍のスラングで「苦痛の極限地帯」や「棺桶」を意味する。

ジェレミー・レナーは今作における劇薬。映画的には緊迫感や緊張感を煽る役割であり、その危なっかしさの裏にある真実が現実世界の闇を抉っている。

*ストーリーのある戦争映画も勿論自分は好きなので、このレビューはそういったタイプの作品を否定する意図がある訳ではなく、今作はそれらとは違った新しい側面を持っている映画なのだということを言いたいだけなのです。描き方として新鮮で繊細であることが、とにかく素晴らしいと。


【映画情報】
上映時間:131分 (Netflixは125分版)
2008年/アメリカ🇺🇸
監督:キャスリン・ビグロー
脚本:マーク・ボール
編集:ボブ・ムラウスキー
クリス・イニス
出演:ジェレミー・レナー
アンソニー・マッキー
ブライアン・ジェラティ
ガイ・ピアース
レイフ・ファインズ
エヴァンジェリン・リリー 他
概要:イラクに駐留するアメリカ軍の中で
も最大の危険を伴う爆発物処理班の
兵士を描き、2009年の賞レースを席
巻した戦争映画。命知らずの兵士と
仲間との確執と友情を軸に、緊張感
溢れる爆発物処理の現場をリアルに
映し出す。
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