ロクシ

ハート・ロッカーのロクシのレビュー・感想・評価

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)
4.0
ハート・ロッカー。
ずっと心(heart)に鍵をかける人だと思ってた。
傷ついた(hurt)ロッカー=棺桶みたいな意味らしい。イラク戦場のスラングとのこと。

アカデミー作品賞を取って、それほどじゃないだろうと世間で物議を醸したのだけすごい印象に残ってて、面白くないのかなーとずっと見てなかった。

結論から言うと私はすごく面白かったです。緊張感があって味のある作品だと思う。
ただ、アカデミー作品賞…なのかなぁ?爆弾処理係の日常仕事映画なので、地味だし外国語映画賞にありそうな感じ。
全部を語らない映画なので、ネットの解説を読み漁ったり、気になってもう一度見たくなっちゃう。
内容は硬派だけど、女性監督っていうのもなんかわかる。この前映画館で見たハンターキラーやローンサバイバーに比べると人間がリアルに繊細に描かれている気がする。
なんか、「戦う兵士」!!っていうより、みんな会社員みたいなの。
戦争映画というより爆弾処理お仕事映画のように感じた。
特に狙撃対決のシーン。
あと一人撃たないといけないが、なかなか敵が見えず、狙撃係のサンボーンをサポートしてるジェームズが、ジュースをエルドリッジに取らせて、サンボーンに飲ませてあげる。
ストローが一回でささらないところがリアル。
蝿がすごい邪魔そう。砂が顔について気持ち悪そう。
狙撃姿勢のまま数時間経って日が暮れそうになり、ジェームズが「なぁ、もうよくないか?」
すごくお仕事ドラマっぽくない?
こういう玄人感あふれる雰囲気大好き。

そういえばドラマのウォーキング・デッドの最新シーズンも、ショーランナーが女性だったな。湿っぽい感じがなんかわかる。

後半でジェームズが熱くなりすぎて自分の仕事の範疇を超えて、テロリストを深追いして味方に怪我させてしまったり、DVD売りのおじさんに銃を向けてテロ組織の家に連れてけと言ったり、仕事に入れ込みすぎてチームに迷惑をかけちゃう。そんな自分にシャワー室でこっそり苛立って泣く。
お仕事ドラマでありそう。

主人公のジェームズは仕事人!って感じのニヒル?な爆弾処理班。爆弾を解体することで自分の生きる意味を見出してる。
性格は基本冷静で、焦る仲間に対しても的確に優しく指示する。
めっちゃかっこいい!
一匹狼のクールな仕事人、仲間にはドライだけど自分の仕事の譲れないところだけは熱くなるって女性に好まれるキャラだよね〜。

サンボーンが、自分には子どもは責任持てない→でも本当は男の子が欲しいんだ。でも自分ではだめなんだと涙するシーンが切ない。
戦地に行っていつ死ぬかわからない自分が子供を持っていいのか。人を殺して殺されかける日常を経験している自分が、穏やかで幸せな家庭を築いて父親になれるのか。
そんな葛藤を描いてくれるのが嬉しかった。
ローンサバイバーでは冒頭で「お前の嫁は腹ボテかw」みたいな妊娠を他人事のように話す男たちにちょっとイラッとしたから。
見終わってからもふと思い出す映画になりました。

【わからなかったところ】
・DVD売りの少年ベッカムは人間爆弾だったのか?
→ジェームズの勘違い説と、殺された説がある。再会した時に「またサッカーしようよ」って言ってたからあの子はベッカムで、人間爆弾の子は人違いだったのかなあ?
・ジェームズの解体作業前にタクシーで突っ込んで来た人は、何がしたかったんだろう?テロリスト?
・DVDのおじさんが脅されて連れて行った家はなんだったんだろう。

似た名前の「ハートアタッカー」っていう映画があるんだけだけど、あちらはイラク側の人々の視点でアメリカ兵を見られるので両方見ると面白いです。
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