福福吉吉

火天の城の福福吉吉のレビュー・感想・評価

火天の城(2009年製作の映画)
3.0
1576年(天正4年)、尾張熱田の宮大工、岡部又右衛門(西田敏行)は織田信長(椎名桔平)から、近江安土に五重の天守閣を持つ城の設計・建築を命ぜられた。多くの難題に遭いながら、又右エ門とその仲間たちは3年間という期限の中、城の建築を続けていく。

原作の小説「火天の城」(山本兼一)は読んでいません。

ストーリーのテンポは良く、日常の穏やかで愉快な情景と困難と闘う緊迫感で上手く緩急がついていたと思います。戦国時代の物語ですが、特に専門的な知識が無くとも楽しめる作品だと思います。

主人公の岡部又右衛門は建築に常人離れした情熱を傾ける人物であり、それでいて、たとえ殿様が相手でも自分の信念を貫く意志の強さが描かれており、城の建築を賭けた指図(設計図)争いで信長の要望より信長の安全をとって設計したり、信長と敵対する勢力である木曽の領地に命がけで支柱となる木材を探しに行く姿は、まさに職人としての意地が感じられて良かったと思います。

他の登場人物をとても魅力的で、又右エ門の妻であり、一心に支え続ける岡部田鶴(大竹しのぶ)、又右エ門率いる岡部一門の大工たちなど、その心情が上手く伝わってきて良かったと思います。しかし、娘の岡部凛(福田沙紀)が非常に浮いているように見えて仕方が無かった。

ストーリーの中では、木曾の檜を手に入れるまでのエピソードが非常に熱く、又右エ門と木こり(緒形直人)の交流、檜が届くまでの又右衛門たちの不安、主君である木曽義昌の命に反して神木を又右衛門に託した木こりの生き様、と見応えがありました。

その反面、巨石を搬送中に信長の命を狙う刺客たちが現れるエピソードが、それまでの地味だが真面目に描かれていた作品に合わず、極めて不自然に感じました。このシーンだけ剣劇になっているのですが、絵面的な変化を求めたのでしょうか。私には非常に不快に感じました。

面白い作品だと思いますが、もっと面白く出来た感じがしました。
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