荒野の狼

火天の城の荒野の狼のレビュー・感想・評価

火天の城(2009年製作の映画)
2.0
安土城跡と周辺の博物館を訪れる機会があり、安土城に関心をもったので本作を鑑賞。本作は冒頭で、城が築城数年で焼失したことが紹介されており、そこまで歴史を辿るのかと期待したが、映画は城の構想から完成までで終了。安土城でユニークなのは黄金の天守閣と吹き抜けの構造であるが、本作では、これらは主人公のライバルの大工の石橋蓮司らがプランしたという設定で、ミニチュアのみの登場に終わっている。また、城に関する限り、築城に必要な巨大な柱を木曽より入手するという話がメインであり、城のユニークな内装や石垣、城郭などについてはほとんど触れられたおらず、城が目的で本作を見ようという人には勧められない。安土城の天守閣跡に実際行ってみると、そこからの風景が往時のものを想わせるものがあり感慨深いが、本作では築城の過程で、琵琶湖を見下ろすシーンがたびたび映し出せれるが雰囲気は出ている(このシーンは淡路島から瀬戸内海を撮影したものであるという裏話を知ってしまうと拍子抜けしてしまうが)。
ドラマの部分では主人公の宮大工の棟梁である岡部又右衛門 役の西田敏行と、その妻役の大竹しのぶは安定した演技。この夫婦の娘役は、福田沙紀であるが、石田卓也との恋愛のストーリーは深みがなく失敗。史実では、岡部は息子と築城にあたったので、息子を登場させたほうが、築城にフォーカスをおいたものになったのではないか。
他の出演陣では、木曽の木こりの長の緒形直人が好演しており、セリフは少ないが鋭い佇まいだけで、人物の迫力が伝わる。岡部の部下の山本太郎の役どころは、人物としては利己的かつ浅薄で、恋愛絡みのストーリーも織り込んであるが映画の流れからも不要であり、山本の演技も大げさで、映画の中で浮いてしまっている。また、岡部の部下とその家族が多数登場するが、描かれ方に人としてのリスペクトがなく卑下されており、昔の時代劇や映画に出てくる民百姓や絶海の孤島の未開人のそれであり、俳優陣の演技も大げさでいただけない。
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