太鼓トラ

オーシャンズの太鼓トラのネタバレレビュー・内容・結末

オーシャンズ(2009年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

映像は素晴らしい。絵画的な美しさは、自然を無作為に切り取ったものではなく、人間が美しいと感じるような絵柄を慎重にチョイスして編集していると感じた。クラゲのシーンには文字通り目を奪われた。

しかし、何かというと意味ありげな二匹(カップルと言いたいのか?)、親子が登場し、「人間のような動物の姿」に感動しろと言われているようで、不快とまではいかないにしろ、極めて作為的なものを感じた。

また、多くの人が指摘しているように、一部非常に残酷なシーンがあり、そこだけ人間(アジア人。おそらく中国系。日本のフカ漁は港に水揚げされているので、船上でヒレだけを採取したりはしない。肉も流通している。)が出てくるのはなんとも腑に落ちない。よく言っても「不粋」、正直言って不快だった。

老人と少年が登場するのも、なんとも野暮。せっかく美しい海に感動して、この美しい自然が愛おしい、この地球を守らなければ……などと殊勝なことを考えているところへ、「存在すら知られぬままに滅びた種もいる」などとしたり顔で言われたら、興醒めすること甚だしい。何を偉そうに、海洋生物の一体どれほどを知っているつもりなんだ⁉︎ 地上の生物だって、人間が名前をつけることができているのはほんの一部。地球全体で考えれば、存在すら知られぬ種が圧倒的多数なのに。なに偉そうに説教してるんだ、しかも老人、あなたは革靴を履いていますね。血だらけになって皮を剥がれたのは牛さんでしょうか、ヤギさんでしょうか?と皮肉のひとつもいいたくなる。

え?? 食肉用も被服装飾品用も、家畜として飼育すれば残虐ではないのか?西洋人よ?あのかわいい仔牛や仔羊や仔山羊を解体して皮を剥ぎ食べ尽くすのは残虐行為ではないのか? ……と、怒りの矛先は止まるところを知らず、
まったく不粋なことをしてくれるよな。せっかくの美しい映像が台無しだよ。


そして、エンドロールにテロリスト、ポール・ワトソンの名前を発見したときには、やはり!と激しく納得しつつ、いやいや2009年時点、彼はテロリストではなかったな、たしか。と思いなおした。


観終わって、レビューをいろいろ読んでいたら、公開当時のほうが怒りに駆られた日本人が多かったような気がした。最近のレビューは、考えさせられたor悲しくなった系が多いような。

共生だの多様性だのの大合唱喧しいが、結局世界は、人類文化の多様性を平気で薙ぎ倒す白人至上主義者どもに牛耳られているのだな。

いやしかし、映像は本当に美しかった。うちに大画面テレビがあってよかった。酷暑の中、この映像を流して、好きな音楽をかけておくのが個人的にはベストな楽しみ方か。
太鼓トラ

太鼓トラ