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遥かなる山の呼び声のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

遥かなる山の呼び声(1980年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

北海道中標津町を舞台に、訳ありの男と酪農を営む母子家庭との心の交流を描く。
口数は少ないが、働き者で、腕っぷしも強い。どこか陰もあり…。これぞ高倉健という男臭さとカッコよさ。
倍賞千恵子も、夫に先立たれ一人牧場を切り盛りする薄幸な女の色気を発揮する。
仄かに惹かれ合う二人の恋がいじらしい。
また、幼き吉岡秀隆が演じる少年と男との擬似父子関係も微笑ましい。
父親を亡くした子どもが、女親では開けられない心の扉を開く。
男も少年が可愛くて堪らないのが伝わってくる。
北海道の雄大な自然、話もまるで西部劇。
高倉健が大地を馬に乗って駆るシーンは、まさしく山田洋次の西部劇への憧れと慕情。音楽も素晴らしい。

男は、実は殺人犯だった。
とはいえ、凶悪犯では決してなく、人を殺めてしまった事は許されないが、充分同情の余地はある。
牧場で暮らした短い思い出を心の糧にし、男は警察に捕まる。
ラストシーンが秀逸。
警察と共に乗った電車に想いを寄せ合った女が乗ってきて、他人事のように話を始める。
女は息子と共にあの牧場で、“夫”の帰りを待つという。
男は必ず帰ってくると待ち続ける女の強さと優しさに男は静かに涙する。
気恥ずかしいほどの性善説の物語だが、まるで演歌のように日本人の心に染み入る名作。
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