美しい髪結いの女を妻とするためだけに生きてきたと言っても過言ではない男の話。
唐突に見える展開も主人公と妻のあまりにも排他的な暮らしぶりも美しい映像と美しいフランス語に惑わされて気にならず。
とても情熱的な愛し方、求め方をしているのに、静かに見えるのは主人公の感情が表情に現れないせいか。
妻の死後も、生前と同じように店を開け、客を入れ、クロスワードのマスを埋め、時に唐突に踊り出す。
妻の死を受け入れられないというよりは、伝わっていると思っていたはずの愛が伝わっていなかったことの哀しみ。
そして明日も明後日もその先もこの手の中にあると思っていた愛を突然失った哀しみ。
妻がなぜ自殺したのかは推測すらできないけど、この映画、私は好きでした。
ラスト、踊る主人公のその哀しみが胸に迫り、はからずも泣いてしまいました。