イホウジン

007 ロシアより愛をこめて/007 危機一発のイホウジンのレビュー・感想・評価

3.7
「騙し合い」と「秘密道具」

前作と比べるとSF感やワクワク感に乏しいし、アクションもかなり小規模である。なによりタイトルに“ロシア”と付いておきながらソ連にボンドが入るわけでもないという、なかなかタイトル詐欺な映画でもある。そんな今作がなぜ支持されるのか考えると、おそらく大きく2つの要素があげられる。それは登場人物同士の「騙し合い」と彼らの使う「秘密道具」だ。
今作の大きな特徴は、前作のような大胆なアクションに代表される視覚的な緊張感のほとんどを、“登場人物同士が嘘をついていて騙し合っている”心理的な緊張に置き換えられているところだ。今作の主要な登場人物は何かしらの身分を偽って人前に現れることが多いが、それが前作にはないような静かだけどハラハラするより精神的な意味での緊張感をもたらす。ストーリーの中でその騙し合いの要素は上手く効いていて、それが終盤のハイライトの連続に繋がっている。
そして今作のもう一つの魅力は、登場人物たちが使う秘密道具だ。ボンドのバッグは今作においてフルスペックを発揮するし、潜望鏡の使い方もなかなか面白い。終盤に登場するスペクターの毒針つきシューズもいかにもスパイの道具という感じで良い。肉体の闘いが今作では少ない分、道具を使った闘いが強調されているようだ。

内容自体は可もなく不可もなくといったところ。つまらない訳ではないが、やはり抑揚のはっきりとしない映画は観ていて少し疲れてしまう。ユーゴスラビアでの電車のパートからエンディングに至るまでも、ラストありきに無理やり映画を終わらせにかかってる感じがして、ストーリーが棚上げされてしまったようにも受け取れた。
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