皿鉢小鉢てんりしんり

ドラブルの皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

ドラブル(1974年製作の映画)
3.7
“キスしながら、男の方の目が全く女を見ておらず、内心愛していないことが観客に伝わる”というクリシェは一体誰が始めたんだろうか……
積み木のアルファベットを組み合わせた洒落れたクレジットから、ガキが誘拐されるまでの冒頭のセッティングは澱みない。が、シーゲルなんだから簡潔で無駄のない映画なんでしょ、と言われると、少なくともこれに関してはだいぶ違くないか?と思う。だいぶムード的な感触もあるし、省略して良いところをむしろ省略しないことで映画の空気を作っている。
でっちあげのヌード写真撮るところなんか、フィックスのロングショットで延々一部始終を長回ししていて、だいぶ窃視症的だが、もちろんシーゲルなのでエロスは微塵もない。ここにすらエロスがないことが、異常にクールな印象に結びついており、個人的には美点だと思う。
マイケル・ケイン、まさかの声真似を平然と使うのが笑えた。
『何がジェーンに起こったか?』のベティ・デイヴィスもまさかの声真似、というシーンがあるが、あっちは“まさかの”も込みでやっているが、こっちは“声真似ればいけるよね”程度のテンションでやっていて、こちらの方が病気が重い。