ルパートの狂気が恐ろしい映画ですが、本当に怖いと思ったのは、彼が理解不能な異常者ではなく、その妄想のメカニズムがちゃんとリアルに描かれているところです。観ているこちら側が、彼の妄想による行動を肯定はできないにしろ、理解はできてしまう。
『タクシードライバー』を観ていたので、本作も犯罪に至る経緯がじっくり語られる流れかと予想していましたが、序盤から一貫した妄想とそれによる奇行が描かれるホラー展開でした。ジェリーの別荘に行くくだりはリアルすぎてゾッとします。
そう思いきや、ラストのコメディシーンのネタとして語られる話や、ジェリーを前にマーシャが語る話で、いっきに観客の視点を主観から客観に転換してくる構成がすごいです。
そしてそのネタやルパート自身を単なる面白いジョークとして社会が消費していくというのも皮肉が効いていて良いです。