このレビューはネタバレを含みます
コメディとスリラーが共存した作品。
かなり面白かったです！
どこまでが現実なのか、どこからが妄想なのか分からない、巧みな見せ方。
はっきり妄想だと分かるシーンがある一方で、見ているこちらまで妄想なのか現実なのか分からないシーンも多く、その戸惑う感覚に胸がざわつく。
序盤のルパートがリタと食事しながら彼女に白紙のサインを見せるシーンも、明らかに周囲の人が怪訝な顔して見ているから、全部一人芝居してるのかもと思ったり。
夢を見て妄想しているような綺麗な域を飛び越えて、底知れぬ不気味さにゾッとする。
異常な執着や話の通じなさ、笑顔なのにズレがある。それがめっちゃ怖い。。。
とくに、大勢の観客の写真に向かって漫談するルパートを背中から映したシーンは、かなり強烈でした。
誰からも名前を間違われ、厄介払いされるルパートは、ジェリーに憧れて彼に成り代わりたい訳ではなく、自身の存在証明をしたかったのかな？
彼は元々普通とは違っていたのか、それとも徐々に狂っていたのか。。。
ラストの漫談で語った半生は、真実なのか嘘なのかも分からない。
人生って皮肉。
劇中のルパートの台詞ですか、正にそう思えるラストでした。
ただ、伝説のコメディアンになるラストも妄想ともとれる演出だったし、それなら最初から最後までこの話全部が彼の妄想だったのかもしれない・・・と、考えだすとエンドレスです。
あと、改めて『JOKER』は本作をかなり意識して作られていたんだなって分かる。
というか、結構まんま『JOKER』と同じでびっくりした。
主人公の描きかたは全然ちがいますが。
『JOKER』は分かりやすく格差をテーマにしていたし、アーサーはあの奇抜な姿で自分自身すらも演じて覆い隠し、自分を虐げてきた世間への復讐と人生の再生を狂暴な衝動性をもって描いていて、かなり負の感情渦巻く作品でした。JOKERはヴィランだしね。
本作のルパートは、ラストの漫談での台詞の通り「ドン底で終わるより一夜の王になりたい」っていうシンプルな理由だったんじゃないかなって思った。
普通の人とは違うせいで理解されない生きにくい人生でも、世間に何かを残したかったのかなと思えて、共感はできないけど前向きに捉えることができる作品でした。
