みかんぼうや

キング・オブ・コメディのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
3.9
イカれ妄想癖ストーカー野郎の大暴走劇。マーティン・スコセッシ監督お得意の“人間の狂気”を描いた作品の中でも、「タクシードライバー」のトラヴィスに勝るとも劣らぬ、いや、スコセッシ作品の中でもNo.1にイカれた野郎と言っても過言ではない強烈な主人公。そして、それを演じるは、そのトラヴィスも演じたロバート・デ・ニーロ。やはりスコセッシ×デ・ニーロのタッグは最強。

設定は、人気コメディアンを夢見る主人公が、人気TV司会者の出待ちで少し会話しただけなのに、自分がコメディアンとして評価されたと勘違いし、妄想につぐ妄想の中で強引に彼のTV番組に出演しようと試みる話。とにかく止まらぬ妄想と行動が異常。

「グッド・フェローズ」「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」のようなテンポ良くスタイリッシュな作品も好きだし、「シャッター・アイランド」のようなミステリアスな作品も好きだけど、私はやっぱり本作や「タクシー・ドライバー」のようなよりじめっとした空気感の中で展開される、常人には計り知れないような思考回路を持った人間が主人公のスコセッシ初期作品に一番魅力を感じてしまう。

あの「ジョーカー」は明らかに本作へのオマージュ、いや、少なくともインスパイアされていることは間違いないよね?と思ってしまうほど、重ね合わせてしまう場面が多数。いや、「ジョーカー」のTV司会者にロバート・デ・ニーロを使っている時点でそうですよね?きっと。

しばらくは再鑑賞しなくていいけど、数年経ったら、またどうしても観たくなるような中毒性を感じる作品だ(「タクシードライバー」も20年の時を経て再視聴したので)。
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