なかずかい

キング・オブ・コメディのなかずかいのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
4.0
いやなんか凄い映画だったな、主人公ルパート・パプキンにめちゃくちゃ腹が立ってくるのはそれだけロバート・デ・ニーロの演技が凄いからだろう。何を考えているのかは全部解るのだが何も分からない、という絶妙な演技が凄まじい。
いるよなこういうヤバい奴、と思えてしまうのは、こういう自分の中で謎に現実を歪めて物語に出来てしまう凶人に私自身直接苦しめられた経験があるからなのだが、それを踏まえてラストシーンはゾッとするような恐怖を感じた。
芸能人は色々な人に絡まれて大変だ、と思うが現実の日本でも実際に凶人が出現していることを踏まえると、こういう凶人はどこにでもいるのかもしれない。京アニ放火犯とか、特撮作品関係者に自分の妄想設定なんかを送りつける人とか。ルパート・パプキンも一見すると普通の人っちゃ普通の人である。警察官も彼の芸を見た後は法廷での振る舞いに関する助言をするくらいだしあの執着心さえなければ良き隣人にはなれたのだろう。パプキンも結局社会に認められたコメディアンに実際になれてしまったということを考えても、意外と社会にはこういう凶人が幾らでものさばっているものなのだ。わいの同級生にもいたしな。怖。

パプキンの妄想がところどころに混じるくせに急に場面転換するせいで何が何やらなのだが、会話が進むにつれどういう状況なのかがなんとなく理解るようになっているのが凄く絶妙で、映像の力を感じた。これだけ説明も無しに映像の力一つでパプキンの狂気を魅せられるのは流石。

マーティン・スコセッシ作品はあまり見たことがなかったのだが興味が湧いてきた。『シャッター・アイランド』は見ているのだがこう現実と空想の境界が曖昧な凶人を描いた作品が多いのだろうか。
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