ポルりん

キング・オブ・コメディのポルりんのネタバレレビュー・内容・結末

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【あらすじ】

ニューヨークに住むパプキンは人気コメディアン、ジェリー・ラングフォードの大ファン。
ある日、やはり熱狂的なラングフォード・ファンであるマーシャと知り合い、2人で大胆な作戦をくわだてる。
なんとラングフォードを誘拐し、替わりにパプキンがTVショーに出演しようというのだ。
ラングフォードを縛りあげ、TV局に向かうパプキンだが……。


■ 所感

非情に社会風刺が効いていていいね!!
タイトル的に最初は愉快なハプニングが連続するコメディかと思いきや、実際はテレビに依存し芸能界の華やかさにとり憑かれた社会を痛烈に批判した風刺劇である。


■ 演出

文句の付け所がないくらい素晴らしい。

・狂気

本作では主人公「パプキン」がなかなかに狂気に満ちたキャラクターを演じている。
彼を演じる「ロバートデニーロ」の好演もいい、それ以上に演出が素晴らしい。

特にパプキンが自宅にいるシーン。
妄想狂のパプキンの部屋には等身大のスターや観客のパネルが置いてあるのだが、パプキンは毎日のようにそのパネルと会話をしている。
この独り言の中、母親の

「いいかげんにしなさい!!」

と叱り声が聞こえる。

決して画面には登場しない母親と会話する光景はさながら『サイコ』の「ノーマン」を彷彿とさせるほど不気味に感じさせる。


・現実と妄想の区別


本作ではパプキンの妄想と現実を同じよう区別のつかないよう描いており、それを何の前触れもなく交互に入れ替えている。
この手法のおかげでパプキンが持つ狂気もごくありふれたものに感じるようになり、自然と主人公に共感することが出来る。



■ 脚本

「一夜だけのキングでもいい!」

このような一夜だけのキングと言うアメリカ的成功を夢見て、喜劇王を誘拐し、その持ち番組を乗っ取る計画と立てる。
そのディテールは杜撰そのものであり、到底成功する訳がないと思うのだが、何と大成功してしまう。
もちろん、警察に捕まり刑務所にぶち込まれてしまうのだが、彼は刑務所で自伝を執筆し、それがベストセラーになる。
話題の中に出獄したので、彼はそのまま人気芸人の晴れ舞台に出ることができ、ここで初めて妄想と現実が一体化するのだ。

一見するとハッピーエンドに見えなくもないのだが、パプキンの表情を見ると、どうにもそうは思えないのだ。
個人的には彼に成功を与える方が、より過酷な解答に思えてしまう。
ポルりん

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