ハナカズキ

キング・オブ・コメディのハナカズキのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
4.3
「コメディの王様」。タイトルはなんとなく楽し気で陽気な雰囲気が漂いますが、スコセッシ×デ・ニーロでただただ楽しいコメディな訳はない。ジャケ写からも不穏な空気感が伝わります。


この映画はコメディアン志望のパプキンが人気コメディアンのジェリーに近づき、自分の才能を認めてもらってテレビに出演しようとする話です。パプキンが健気に頑張る成長物語ではありません。「ジョーカー」に似たような雰囲気が漂う話でした。

序盤から、現実とパプキンの妄想が映し出され、どれが現実でどれが妄想かわからないという狂気感が漂います。家では一生懸命練習をするパプキン。しかし、オーディションなどには一度も出向いたことはない様子。現実逃避なのか。しかし、過剰な自信を持っているパプキン。

すでにいい年をしたパプキンを見て痛々しい気持ちも抱きつつ、どこか自分自身が痛いところを突かれるような、居心地の悪さも感じます。誰もが新しいことにチャレンジしてみたい気持ちはあっても、怖かったり躊躇した経験があるのではないでしょうか。私なんかいつもそうです。

デ・ニーロ出演の映画はどれもその演技力に驚かされますが、この映画も圧巻の演技でした。純粋さと狂気を兼ね備えたキャラクター。いくら演技達者のデ・ニーロとは言え実際にはコメディアンではないので、あのスタンダップコメディはかなり大変だったのでは?デ・ニーロくらいになればなんてことはないのかな。本当のコメディアンのようでいて、どこか狂気を内包しながらもその場を支配する、まさに「キング・オブ・コメディ」でした。


そしてラスト。あれは現実?それとも妄想だったのでしょうか。解釈の仕方でラストの印象も大きく変わる映画でした。
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