140字プロレス鶴見辰吾ジラ

キング・オブ・コメディの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)
4.4
【この男の人生は悲劇か?それとも喜劇か?決めるのはあなた次第、笑うのも泣くのも、あなた次第。】

主人公、ルパート・パプキンは夢想家にして妄想家。一流のコメディアンになることを夢に見て、部屋にパネルを飾り人生を装飾する。静かにしろ!と母親。世間は彼を嘲笑うのか?そこをどけ!血統主義、道を空けろ!アメリカよ。夢と現実が織りなすカオスに男は妄信することで突撃する。彼の生い立ちは不幸か?彼のマインドは愚かか?それを決めるのでは現実ではなく、紛れもなくその刺激を与えられたオーディエンス。笑いの道が与えた偶然というチャンスを信じた男はたとえ相手が風車でも魔物でも構わない。夢を語れ!と搾取する大人は声高に叫ぶ。重なりもしない時計の針を追いかけている。真実に人は満足しない。幻想を信じることで成り上がるのが人の弱さであり強さだ。多くの原住民を虐殺した過去も、現実を全うしたところに待つ楽園も。アポロは月に降りたのか?この男は英雄なのか?

夢も幻も消えた空虚な神経で生きるなら我々人類は動物にカテゴライズされたまま母なる大地の循環に永遠と付き添わされる。ならば夢を語り、そして成り代われ。真実や幻想があるからそこに富と貧困が生まれる。二極化かすればそこを穿つ英雄の登場を待ちわびる。人にとって真実はクスリでなく限りなく毒。夢想家や妄想家が自身の悲劇を、そして真実をも武器にして笑いへと誘う。ラストを妄想と見るなら現実に帰りなさい。真実と思うならこれかは晴れる。虚構の中のオーディエンスにも現実を鑑賞するオーディエンスにもそれを委ねて幕は開き、そして閉じる。

信じるか信じないかはあなた次第。

圧倒的自虐をネタにして喜劇に変えることはあの頃も今も「働き方改革」の正解のように思えた。戦争と貧困と塗りつぶされた世界を彩るものが欲しいなら、信じるものを信じ、無敵の人へと、ときに英雄とときに悪と呼ばれる者へと一夜にして世界を一変させる。