【ミハルコフ監督による「十二人の怒れる男」のパロディ】
ロシア映画。ニキータ・ミハルコフ監督作品。
有名なアメリカ映画 『十二人の怒れる男』(1957年) のパロディとして作られている。しかし、ミハルコフ監督のことで、無論単なるパロディにはとどまらない。
舞台は現代ロシア。被告はチェチェン人少年で、彼を引き取って育ててくれたロシア人将校である義父を殺しカネを奪ったとされた。
陪審員として選ばれた12人の男たちは、最初はなるべく早く結論を出そうとするが、やがて・・・という展開もルメットの原作に同じ。
だがその先が異なっている。議論を交わす中で、男たちは自分の人生の重要な体験を語り始めるのだ。想起されたおのおのの体験が、この事件をどう見るかを次第次第に変化させていく。
すなわち、チェチェン人少年の人生と、それを裁くよう要請された男たちの人生が交錯していくのだ。男たちの語りはあたかもドストエフスキーの小説を読むかのようで、こうした手法はロシアならではだなと感じさせられた。
日本でも 『十二人の怒れる男』 のパロディとして 『12人の優しい日本人』 が作られていて、これもなかなかの佳作だけど、日本人がミハルコフ監督の手法を真似てもうまくはいかないだろう。
そして、最後にも意外なオチがついている。
2時間40分と長尺の作品で、特に最初のあたりは進行がロシア的にゆっくりしているので、まどろっこしい感じもするのだが、作品が進んでいくにつれてそういうことは気にならなくなる。
未見の方は是非!