和田島イサキ

食べて、祈って、恋をしての和田島イサキのレビュー・感想・評価

食べて、祈って、恋をして(2010年製作の映画)
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 どうしてこんな嫌悪感しか湧かないような人物を主人公に!?
 140分の長丁場、ずっと「鼻持ちならない」を目と耳から浴びせられたようなお話でした。

 本当に何も共感できるところがない……いや、なくもないのが逆に嫌だ……。
 ものの考え方や言い分にはまったく同意できるところがないのですけれど、でも場面や映像の楽しさには惹かれてしまって、その瞬間に「自分もこの享楽的な選民の生活に憧れている時点で主人公と同類」ってなっちゃうのが始末に悪い作品です。

 今はホームレスが雨露を凌ぐのに使ってるローマ皇帝の墓を、自分で引っ掛けて揉めた若いツバメとの別れ話のダシに使って、その直後に広くて暖かな友人宅で感謝祭のパーティを開く場面とか、なんかもう本当に泣きそうでした。
 さりとて自分(※これを試聴している私自身)も似たようなもの、別にホームレスの彼になにするわけでもないというか、こうして呑気に映画なんか見られる方の人間には違いないわけで……。

 ただ、画的な部分というか、旅行のシーンは本当に良かった!
 明るく軽快な音楽と共に、旅先の美しい街並みや自然の光景がバシバシ流れて、そこだけは理屈抜きの気持ちよさを感じてしまう。
 まあ裏を返せばそれはつまり、「主人公が黙っている間は良い」ってことでもあるんですけど……。
 特に最初のイタリア編は、美味しそうなご飯まで盛り沢山で最高。
 その後のインドとバリに関しては、この「食」のシーンが少ないぶん見劣りしちゃう(というか拍子抜け感がある)かも。

 お話はダメでした。総じて中身がスカスカな上、なんかスピリチュアル要素で勝手に満足してる感じ。
 特に序盤、旅に出るまでの経緯は本当にひどい。
 この辺、友人夫妻の諌言が本当に染みるというか、結構情け容赦なく叱ってるのが本当に好き。
 いい大人を女子大生扱い、くらいならまだなくもなさそうですけど、犬に例えるって余程のことですよ?!
 旅行中もちょくちょくこの甘ったれた子供みたいな自分語りが出てきて、それがまたいちいちイラっとするのが最悪でした。本当にいいご身分で……。

 まあ35歳のいい大人が自分探しの旅、という時点で推して知るべしというか、そもこの「自分探しの旅」というものがもう二、三十年前の感性ではあるのですけれど。

 結構散々に言いましたけど、正直あまりネタにもならない感じの作品。
 むしろ主人公抜きでやってほしいというか、ただの観光PR用映像みたいな感じにしてくれたら最高だった作品でした。