Maoryu002

街の野獣のMaoryu002のレビュー・感想・評価

街の野獣(1950年製作の映画)
4.4
ロンドンの酒場で客引きの仕事をしていたハリー(リチャード・ウィドマーク)はレスリング興行で一儲けを企む。それは彼の雇い主夫妻や恋人メアリー(ジーン・ティアニー)を巻き込んでの騙し合いに発展するだけでなく、界隈を牛耳るクリスト(ハーバート・ロム)の逆鱗に触れてしまう。

これはかなり好みの映画。
白黒の映像が味わい深く、夜の街の暗さと裏社会の闇深い雰囲気が素晴らしかった。特に暗闇の中の人物を下から映し出すアングルが緊張感を高めて超効果的。

主人公ハリーは “自己表現したいのに術を知らない、芸のない芸術家” という表現がピッタリだ。口が達者で頭も悪くないのに使い方を間違えて破滅に向かってしまう。
物語は愛も友情も捨て、ひたすら名声を得るために突き進むハリーを中心に進むんだけど、何人もの思惑といくつもの陰謀が重なり合う構成が見事で、それぞれがダークに悲劇的結末に向かっていく。終わり方も最高!

みんなハリーの口車に簡単に乗り過ぎなのは不自然だし、恋人マリーの心情を映す場面がもっと欲しかったけど、これぞフィルムノワール!という見ごたえ。

ハリーを演じたリチャード・ウィドマークが抜群にハマってる。
「アラモ」や「ニュールンベルグ裁判」といった大作もいいけど、これが一番じゃないかな。
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